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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)130号 判決 1960年1月12日

主文

原判決を破棄し、本件を広島高等裁判所松江支部に差し戻す。

理由

上告代理人弁護士田中節治、同草光義質の上告理由第一、二点について。

原判決の判示するところは要するに、本件株主総会決議の内容たる各事項は、いずれもそれ自体、法令又は定款に違背せず、何らの瑕疵もないように見えるけれども、本件株主総会開催の動機、目的は、被上告人前川小太郎及びその他一部株主の権利、利益を侵害し、もつて不当に訴外田中嘉作らの利益を図るためのものであつて、明らかに公序良俗に反するから、本件株主総会の決議は無効であるというに在る。

しかし、株主総会の決議の内容自体には何ら法令又は定款違背の瑕疵がなく、単に決議をなす動機、目的に公序良俗違反の不法があるにとどまる場合は、議決権を無効たらしめるものではないと解するのが相当である。

しからば、本件株主総会決議の内容自体には何ら法令又は定款違背の瑕疵はないものの如く判示しながら(本件株主総会決議の内容自体に公序良俗違反の不法が認められないことは、所論のとおりである)、決議をなすに至つた動機、目的に公序良俗違反の不法があるとして、被上告人の本訴請求を認容した原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があり、論旨はその理由があるから、原判決は破棄を免れない。

よつて被上告人主張の爾余の本件株主総会決議の無効事由につき、更に審理判断せしめるため、本件を原裁判所に差戻すを相当と認め、民訴四〇七条に則り、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋 潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

《当事者》

倉吉市新町三丁目一〇八〇番地 上告人 株式会社キネマ館

米子市朝日町六〇番地 被上告人 成合久司 外六名

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